岩本隆史の日記帳(アーカイブ)

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映画と私

私はほとんど映画を見ない。映画館に足を踏み入れたことは一度もない。

中学まで、映画館のない田舎町で育った。最寄の映画館が隣町にあるのか、そのまた隣町にあるのかさえ知らなかったし、知ろうともしなかった。

小学生のとき、町の福祉センターで「南極物語」が上映されるというので、友人とその母と三人で出かけた。友人たちはチケットを持っていたが、私は持っていなかった。

受付の女性に、満員だから入場できないと言われた。彼女はにっこり笑いながら「お帰りはあちらです」と、私が入ってきたばかりの入口を手で示した。

私は泣きながら家に帰った。

後日、学校で別の友人に「俺もチケットなかったけど、ずっと待ってたら全員入れてもらえた」と聞いた。

この一件があったから映画が興味がなくなったのかといえば、そうでもない気がする。もともと「南極物語」には何の関心もなかった。珍しくこの町に映画がやって来るというので見てみようかと思っただけだ。

でも、だとしたらあの日、なんであんなに涙が出たんだろう。