岩本隆史の日記帳(アーカイブ)

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「陰弁慶の筆」

福沢諭吉の『福翁自伝』で使われている言葉。大学生のときに読んだこの本、今では内容をすっかり忘れているが、この「陰弁慶の筆」という言葉だけは頭にこびりついている。

使われている一節を孫引きする。

執筆者は勇を鼓して自由自在に書くべし、但し他人の事を論じ他人の身を評するには、自分とその人と両々相対して直接に語れるようなことに限りて、それ以外に逸すべからず、如何なる劇論、如何なる大言壮語も苦しからねど、新聞紙にこれを記すのみにて、さてその相手の人に面会したとき自分の良心に恥じて率直に述べることのかなわぬことを書いていながら、遠方から知らぬ風をしてあたかも逃げて回るようなものは、これを陰弁慶の筆という、その陰弁慶こそ無責任の空論となり、罵詈讒謗の毒筆となる、君子の恥ずべきところなりと常に警めています。

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「陰弁慶の筆」すなわち「他人を批判する文章を新聞に書く際、面と向かって言えないことまで書く行為」は恥ずべきことだというのだ。新聞ではないが、文章を公開している者として、自戒したい。

追記(2008-01-13)

田中豊さんのサイト『福翁自伝』の全文が読める。