岩本隆史の日記帳(アーカイブ)

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スケーラビリティへの執着を断つ

このところ、スケーラビリティについて私が考えても無駄ではないかと思い始めている。私が仕事で作っているのは小規模のWebアプリだし、転職する予定も今はない。趣味のほうはといえば、Webアプリ運営に使える予算などたかが知れていて、安いVPSが1台借りられる程度だ。大規模サービスなど作れない。

さらにいえば私は、数十万、数百万ユーザのためのサービスを作ろうと思ったことがない。ユーザが多ければ多いほど儲かる可能性はあるのだろうが、私の目的はカネ儲けではない。私が不便と感じている日々の作業は、この世でたぶん数十人ぐらいの人が同じように不便と感じているはずで、そんなちょっとした不便を解消するWebアプリが私は作りたいのだ。

グリーの社長は「みんな、そこそこの人生で、そこそこで楽しくて、そこそこの成長というのは目指してないよね。日本に失われつつある高度成長期を、この会社だけでやろうよ」といっているらしいが*1、そこそこ楽しい人生こそが、私の理想だ。携帯ゲームで他人のカネや時間を搾取して何が楽しいのか、私にはまるで理解できない。

率直にいって、私がカネに淡白なのは、貧困の体験がないからかもしれない。貧乏な人間がカネに執着するのは当然のことのように思える。逆に、貧乏でない人間が必要以上のカネを追いかける姿は、私には醜くみえてしかたがない。ビル・ゲイツのように最終的に寄付するのなら理解できなくもないが、大規模サービス運営者たちはさて、どうするつもりなのだろうか。

私はキリンジのファンで、キリンジとは兄弟二人組のバンドのことなのだが、その弟が先日リリースしたソロアルバム『River』は、本日付のオリコンでアルバムランキング43位、推定売上枚数は3127枚だった。彼の生み出す音楽が珠玉のものであっても、それを待つ人は3000人程度しかいないということになる。あとで買ったり配信で買ったりする人を想定しても、1万人いるかいないかだろう。だからといって彼は、売上を上げるためにEXILEのような音楽をやりはしない。カネ儲けより、いい音楽を作ることに価値を見出しているからだ。私もそうありたい。

キリンジ弟より明らかに無能である私が、他人の役に立てるとすれば、その規模はせいぜい数十人だろう。数十ユーザの規模でスケーラビリティについてあれこれ考えるのは、杞憂といわざるをえない。

注目しているフレームワークがある。「Caty」だ。

Catyが解こうとしている問題は単純明快です:低スキル、低予算、短期間の条件下で、ラーメン屋さんのサイトをちゃんと立ち上げてちゃんと運用することです。

BPStudy#26 お疲れさまでした、あと、感想/補足/反省とか - 檜山正幸のキマイラ飼育記

200万人が暇をつぶすゲームより、数十人のファンが楽しむラーメン屋さんのサイトのほうが、私には価値あるもののように思える。

私も、口だけではなく手を動かそう。